第14話「貢がせる女」



――朝――







「なんとか朝になる前に帰ってこられたな」

「・・・・おっさん、まともに働いたら?」


「アホ、俺はちゃんと働いてるぞ。
ただ金がないだけだっての」





「それよりもだ、カジノの事カセリンに言うんじゃねぇぞ?
男同士の秘密だかんな!」

「わかってるよ・・・」



「約束だかんな!ヤクソクー」グッ

「わかったって・・・・(子供かッ)」





「あ、そうそう。
一応お前にも言っとくけど、もう勝手に家出とかすんなよな。」

「なんかあんならちゃんと言えよ?遠慮したりすんな。
俺にとってはお前もカセリンも俺の家族なんだからな!」






「正直、お前の家庭の事情はよくしらねぇが、
今どき自分の子供を売るとかフツーじゃねぇだろ。」

「・・・・・・・」




「大人なんか信用できないかもしれないが、
俺はお前が自由に生きられるように手助けしてやる。」

「ここでどう生きるかはお前次第だ。
与えられた環境で精一杯生きろ。」




「俺に出来るのはそれくらいだからな。」








「・・・・・・・」




「・・・おっさん、サンキュー
(まともな事も言うんだな・・・・)」

「おっ!お前ここに来て初めて笑ったんじゃねぇ?」




「よしよし、カワイイ奴だ」

「お、おっさん・・・・ちょ・・・」





「よーし、よ〜し♪」
「おっさん恥ずかしいって!はなして・・・・」

「・・・・・なにこれ」




「おぉ、カセリン」

「おはよう、帰ってたんだ・・・。
どこ行ってたの?」




「おぉ、ちょっと男同士の話をな。
なぁギルバート!」

「あ〜腹減った・・・」
「おい、ギルバート話合わせろよ〜」




「おっさん、それ言っちゃ・・・」

「ん?」





「ワゥワゥ(お嬢〜)」

「今、話合わせろって言ったよね・・・・・」



「まさか、パパ・・・・
またどこかでお金使ってきたんじゃ・・・」

「クゥ〜ン(どないしたんじゃ、お嬢)」





そして、今更ながらギルバートとカセリンが同じ部屋ってトコに
パッチは危険を感じ、カセリンに相談した結果、

前の家の方が良かったとカセリンが言うので、戻る事にした。




「あ〜、やっぱりこっちの家の方が落ち着くな〜
色々と・・・」

やはり車庫なんかより、ベットがあって生活感のある部屋の方が良いと思うカセリン。(当たり前です)




「ここが、お前と俺の部屋だ。」

「・・・・ベットがある・・・」


「奥のがお前のベットだかんな」















「俺のベット・・・・、ドキドキ」

自分用のベットがある事に感動するギルバート。



「もう寝ちまったのかよ、ギルバートの奴」

「色々聞きたい事あんのによ・・・」




パッチは本当のトコ、ギルバートの家族の事や
売られた経緯とかを知りたかったのだが、
ギルバートは話したくないかもしれないと思い聞けずにいた。

何故、家出したのかも本当は聞きたかった。






「ギルバート、お前・・・
本当はこの町にいたくないのか・・・?」






「ま、そーだよな・・・・
自分を売った親がこの町にいるんだろうし・・・」

「偶然町で会ったりしたら、気まずいよな〜・・・」





「・・・でも、本当のトコ
家に帰りたいとか思ってんのかな・・・?」

「う〜ん、どうなんだろ・・・」ブツブツ









パッチは色々考えながら、ギルバートの横で眠りについた。























ギルバートがドン家に来て、一週間が経った・・・







「フィニー!」




「散歩行こーぜー!」

「バフッ」





「あ。いたいたギルバート!」




「ねぇ、ギルバート。
友達にプールに誘われたんだけど、一緒に行く?」

「行かない」



「ちょ、早くない?」

「フィニーと散歩行ってくる」




「なによ、せっかく誘ってやってんのに・・・」



「あたしよりフィニーがいいってワケね・・・」

「いいもんいいもん、あたしだけ楽しんでくるもん!」





「ワンワンッ(お嬢の水着姿・・・・グッ)」

「・・・・・・」











ザバッ



「ふぅ〜〜〜〜、気持ちいい〜〜♪」



「ギルも来れば良かったのにな〜、
もう夏も終わりなのに・・・・」

「・・・・あ、そういえば
ギルって、学校じゃ悪い噂しかなかったっけ・・・・」



「人がいる所は、あたしとじゃ来たくないのかな〜・・・」

「なぁ、カセリン」


「えっ?」



「カルロスと別れたって本当なのか?」

「え・・・、カルロスくん?
う、うん、本当だけど・・・・」



(やだな・・・
あたし、振られた時の思い出しちゃうじゃん・・・)




「じゃ、じゃあさ、俺と付き合わねェ?」

「え?ダラスくんと?」



「う、うん・・・
実はカセリンがカルロスと付き合う前から
・・・す、好きだったんだよね・・・」

「えっ・・・!そ、そうなの?」


「うん・・・・」





「(そういえば、ダラスくんも家が金持ちなのよね・・・
どうしよう、迷うな・・・・ゴクッ)」

「ちょっと待てよ、ダラス!」



「カセリン、コイツじゃなくて俺と付き合おうよ!」

「この間、親父に車買ってもらってさぁ〜
一緒にドライブに行こうよ〜〜!」



「く、車・・・・!ゴクッ」

「(リコも金持ちなのよね。
しかも丘の上の大きな家に住んでるし・・・・
いいなぁ〜)」



「車なら俺だって持ってるし!
なんならカセリンにプレゼントするよ!」

「それで、紅葉の季節になったら一緒に見に行こうぜ!」



「いやいや、俺なんか
景色がすっごくキレイな所に別荘買ってあげるよ!」

「べっ、別荘!?(フラ〜)」



「ちょ、リコ〜!お前その口説き方卑怯じゃね?」

「二人とも、みっともないな〜」


「はぁ?なんだよマクシマス、入ってくんなよ!」



「二人とも、自分たちのアピールばっかして、
カセリンの気持ちも考えろよな!」

「うっ・・・・それは、
まぁそうだけど・・・」



「因みに僕は、カセリンの望むモノだったら
なんでも買ってあげるよ?」

「マックス・・・・(彼の家も大きい農家だし、金持ちだよね)」



「お前もかよ!」
「カセリンを想う気持ちは誰にも負けないぜ!」

「お前、この間シャーリーがカワイイって言ってたじゃん」


「ちょっ、それ結構前の話だし!
お前なんか、この間のパーティーでそそうしたクセに!」

「ちょ、ふざけんなよ!
ありゃあお前が俺のズボンに飲み物こぼしたんじゃねぇかよ!!」




「え、えっと・・・・(誰にしようかな・・・ゴクッ)」

「(な、なによあの子・・・・三人に告られて・・・・
フ、フン!羨ましくなんかないんだからっ)」











カセリンを取り合って三人が揉めている間、





散歩に出かけたフィニーとギルバートは、
川の近くで遊んでいた。




「ワゥワゥ!」

「そーれ、行くぞフィニ〜!」



「バフッ(ナイスキャッチ!)」

「フィニー、なんてカワイイんだ・・・」



「ワゥワゥ(にーちゃん、ワシ腹がへって腹がへって・・・)」
「ん?おやつか?」「バウ!」

「・・・・ギルバート?」



「よしよし、メシだぞ〜♪」
「ワフッ」

「ギルバート、相変わらず犬には優しいのね」



「おいしいか、フィニー。」
「バフッ(にーちゃん、おなごが話しかけとんぞ?)」

「ちょっと、ギルバート!」



「なんだ、マチルダか」

「なんだじゃないでしょ!
最近アンタ見かけないし、どこかでノタレ死んだ
かと思って心配したんだから!」




チルダは、ギルバートがドン家に来る前に住んでいた家の
近所に住んでいる女の子だ。
幼いころから寝床を貸していたりと、ギルバートの幼馴染的
存在である。






「ワゥ〜ン(なんじゃい、スミに置けんのぅにーちゃんも
・・・グフッ)」

「ねぇ、ちゃんと家に帰ってるの?」



「・・・・俺、もうあの家の子じゃ・・・・」




「え?」
「いや・・・・(家の子ってなんだよ・・・)」

「・・・・もしかして、親父さんとは縁を切ったとか?」



「うん・・・・
俺今、新しい家で暮らしてるから・・・・
アイツとは、もう関係ない・・・・」

「そっか・・・・。」




「正直、アンタが親父さんの元から離れてくれて安心した。
これで私も安心して寝れるわ!」

「お前、そんなに俺の事しんぱ・・・・」



「あー違う違う!
もう私のベット貸さなくていいんだと
思って安心しただけよ!」

「あそ・・・」






「ねぇ、新しい家って河川敷の下にダンボールとかじゃないよね?」

「ホームレスじゃねぇよ」


「この犬は?野良犬じゃないの?」

「フィニーは、新しい家の・・・・
飼い犬だよ」


「ふ〜ん、良かったじゃん。
アンタ犬好きだもんねぇ?」

「アンタ昔さ・・・・」
「帰る」
「え・・・」




「昔話とか興味ない。フィニー、帰ろう!」

「バウバウ!(にーちゃん、ワシ眠い・・・・だっこ〜)」




「フン、過去なんて興味ない・・・・か・・・。」

「・・・・・・・・」



「ちょっと、待ってよギルバート〜〜〜!!」

「新しい家に私も行きたーーい!!」パタパタ



「はぁ?やだよ!」

「どんな人と住んでるか気になるのよ!
アンタの親父が親父だったからね・・・・
お姉さんとしては心配なのよ」


「誰がお姉さんだよ・・・・」





「さ、いこいこ〜!」

「おいっ、・・・・・・アイツの話はすんなよ?」


「わかってるわよ」

「・・・・・・」




ギルバートは、
ドン家にマチルダを招く事になった・・・・。