第13話「結婚したら邪魔になる」



―朝―




朝食をした後、
ギルバートはカセリンに、昨日から思っていた事を聞いた。





「なんで俺についてきたんだ?」

「・・・・・」




「・・・・・」

「わからない・・・・」




「あのおっさんに不満でもあるのか?」

「・・・・・・」




「あたし、パパの本当の子供じゃないんだ・・・」

「気づいたら知らない所にいて、パパが引き取ってくれたの・・・。」





「だからかも・・・
ギルバートについてきたの・・・」

「あたし、心のどこかでずっと
あたしって一人なんだと思ってたんだ・・・」





「それで、いつかパパが誰かと結婚したら
あたしは邪魔になるって思ってた」




「でも、家を出てみてわかったよ。
今すっごくパパに会いたい!」

「パパはあたしを追い出したりしない。
そんな事するような人じゃないって、本当はわかってた・・・」





「こんな、どこの誰かもわからないアタシを、
引き取って育ててくれたのに、家出するなんて・・・」

「あたし自分勝手だよね・・・・」





「だから、帰る」

「あ、そう・・・(早かったな・・・)」


「だからギルバートも帰ろう!」


「え・・・・?」




「ギルバートさ、パパに何も言ってないでしょ?」

「あたしさ、自分を受け入れてもらった人に対して、
家出なんて最低な事したって思うんだ」





「最低・・・・」




「あたし、自分の事ばっかだった。
パパが何を考えて、ティム達を造って、
ギルバートも家に迎え入れたのか考えなかった・・・・・」

「自分の不満ばっかり押し付けてさ・・・
勝手に家出だもん、サイテーだよ」






「パパは寂しかったんだと思う。
あたしはパパだけでいいと思ってたけど、
あたしも本当は寂しかったんだ・・・」

「パパが仕事してる間、一人で寂しかったし、
いつも不安だった・・・・」



「パパはもしかしたら、そんなあたしにティムや
サリンダを造ってくれたのかも・・・・」

「だからギルバートも、パパのそういう思いから、
うちに来たんだと思うんだ・・・・」





「・・・・・・そ、そうなのかな・・・・」

「(そういうの、考えた事なかった・・・。


あのおっさんが、何を思って俺みたいな奴を
引き取ってくれたのかとか、考えもしなかったな・・・)」




「(そっか・・・、
よく考えたら、あの人は俺にとって救世主だったのかも
しれない)」

「(本当は俺はどこかに売られるはずだった・・・・
見知らぬ土地で、見知らぬ人に買われて
どんな扱いを受けてたかわからない・・・・)」





「だからギルバート、帰ろう!」

「ギルバートも我慢しないで、
パパになんでも言っていいんだよ。
だって、もう家族なんだもん」



「かぞく・・・・?」

「うん!」



「(我慢しないでなんでも言っていいのが家族なら、
親父とは家族になれなかったのかな・・・・)」

「・・・・・・・。


(ッチ、親父の事考えたらムカムカしてきた・・・・)」




「ギルバート?」

「・・・・わかった、帰るよ」




ギルバートは、とても複雑な感情を胸に抱いたまま、
自分を捨てた父親のいる町、リバービューへと
帰る事になった・・・。














パッチの家へと帰ってきたギルバートとカセリン








「・・・・パパ、怒ってるかな?」




「出てった奴は、もう俺の子供じゃないとか
言われたらどうしよう・・・」

「・・・・・、お前は大丈夫だよ。」


「ギル・・・」








「・・・・・オヤ?」




「アレニ見エルハ、妹かせりんト養子トナッタ
ぎるばーとジャ アリマセンカ!」

「急イデ オ父様ニ ゴ報告シナケレバ!」


「ワゥワゥッ(お、お嬢〜!)」





「オ父様!オ父様ココデスカ!?」バタンッ



「うわっ、いきなり入ってくんなよ!」

「オ、オヤ、失礼ヲバ・・・」


「さっさと出てけ、コラ〜」

「ス、スミマセンデシタ、オ父様・・・
シカシ、かせりんトぎるばーとガ帰ッテキマシテ・・・・」



「な、なにぃ〜!それを早く言えよ!!」バタバタッ








「ワゥワゥ!」

「あっ、フィニー!」











「ハァハァ・・・・・、
おいおい、フィニーが先かよ」

「あ、パパ!」



「パパ〜!」バタバタ

「お、おお、カセリン・・・」



ガバッ



「パパ、ごめんね。ごめんなさい・・・!」

「おお、カセリン」




「会いたかったよ、パパァ〜〜〜!」

「おお、俺もだ(ってか、家を出てから一日も経ってねーけどな)」



「ちゃんとメシ食ったか?」

「うん、食べたよ!」


「なら、いい。」



「ギルバート、コノヤロー。
ちょっと来い!」

「・・・・・・・」




「パ、パパ、あの・・・・」

「カセリン、ちょっとコイツと出かけてくるから、
家で待ってろ。」




「う、うん・・・・」













ブロロロロ〜








パッチはギルバートを車に乗せ、どこかへと向かった。













夜になっても帰ってこず、二人を心配するカセリン。




「・・・・・・・」




「どこ、行ったんだろ・・・・二人とも・・・」




「家出の後なんて、ちょっと怖いな・・・・」

「二人とも無事に帰ってきてくれたらいいけど・・・」



「とりあえず、寝よう・・・」

「ぐ〜〜〜・・・・・」


家出した先では、よく眠れなかったカセリン。
家に帰ってきて安心したのか、すぐ眠りについた。











その頃、二人は大きな街のカジノへ来ていた。






「〜〜♪」






「(俺は今日ここで売られるのかもしれない・・・・)」

「(仕方ないよな・・・、
問題起こしたら追い出すって言われてたし・・・・)」





「(もっと早く気づく事ができたら良かったな・・・
おっさんの気持ちとか・・・)」

「〜〜♪」



「ぐふふ♪
さ〜て、やってきましたよ〜!カジノに!!」

「(おっさんの気持ち・・・・)」





「あ、先にお前に言っとく事がある。
ちょっと来い」

「な、なんだよ」



「あのな、カセリンには内緒だぞ、ここに来た事。」
「は?」

「カジノだよ、カジノ!
あいつにバレたら、また金がどーのとうるせーからよ」


「あ、あぁ・・・」



「なんだよ、歯切れ悪りーなぁ・・・。
あ、わかった、お前も遊びたいんだろ」

「残念だが、お前にはまだ早えー。
大人になったら連れてきてやるよ」



「よし、行くぞ!」

「え・・・・、大人になったら・・・?」









ブラックジャックをやるパッチ

「ドウナサイマスカ?」


「STAND!」




「おう、ギルバート。
観戦でもするか?」

「それより、おっさん。
家計ピンチなんじゃねぇの?」



「あぁ、大丈夫大丈夫」





???「お・ま・た・っせ〜♪」

「おせーよ、シルバ。
てか、お前その格好なんだよ」


「僕、今はマジシャンやってんの。
それより、こっちの子は誰?」

「あぁ、俺の養子」


「え・・・、よくやるなぁパッチも・・・」



「カセリンちゃんは元気?」
「・・・・あぁ、元気なんじゃね?」

「もう思春期真っ只中なんじゃないの?
カワイイんだろうな〜
いいなぁ、会いたいなぁ〜♪」


「写真とかないの?」

「え・・・・、そういや撮った事ないなぁ・・・」


「パッチ、ダメだよぉ〜
ちゃんと子供の成長を写真に撮っておかないとさ〜」



「成長ねぇ〜・・・・」

「それよりパッチさ、結婚しないの?」


「あ〜、もうどーでもいいかなって・・・・」




「(結婚・・・・、アイツが言ってたな・・・)」




「パッチさ、そろそろ誰か相手見つけとかないと、
カセリンちゃんが結婚したら一人ぼっちになるよ?」

「カ、カセリンが結婚・・・・・」




「(いや待て・・・・
つい最近、数時間だけど一人を味わったぞ?)」

「(まぁティムやらフィニーやらが居たけど、
人間は俺一人だったよな・・・・




しかも、ここに恋人候補っぽいのが居るし・・・・
今度こそ駆け落ちとかされたらマジで一人になるな・・・)」




「・・・・・・・」





「あ、テメーが変な事言うから負けちまっただろーが!」

「でも、カセリンちゃん。
結構子供の時からおませさんだったし、
もう彼氏が居てもおかしくないんじゃない?」


「むぐっ(な、なぜ知ってる・・・)」




ガタ・・・


「ッチ、帰んぞ。ギルバート」
「あ、うん・・・・」

「えー、パッチもう帰んの?」


「あんま遅くなると、カセリンに怒られるしな・・・・
(今ちょっと微妙だし・・・・汗)」




「パッチ、結婚とかちゃんと考えときなよ?」

「うっせー、今日はお前持ちだからな!」


「わかってるけどー」





「ッチ、シルバめ・・・・
余計な事言いやがってよぉ〜」

「(・・・・・・・)」





「おい、ギルバート。早く乗れ!
もうすぐ朝になっちまう!」











ブロロロロロ〜





「・・・・おっさん、さっきの人が言ってた事・・・・」

「あぁ、結婚の事か?カセリンには言うなよ?」



「アイツが知ったら、自分は邪魔だとか思うかもしんねぇし・・・
したら、今度こそ帰ってこねーかもな・・・」

「大丈夫だよ、おっさん。
アイツ・・・あ、いや、カセリンだって
色々考えてるみたいだし・・・・」



「お、お前・・・・
カセリンとそーゆう・・・・」

「え・・・?」


「いや、そーゆう話してんのか・・・・っと」


「まぁ・・・ちょっと・・・・
そーゆう話になったと言うか・・・・」

「フ、フ〜ン・・・・」


「(なんだこの雰囲気・・・・)」







パッチとギルバートは微妙な雰囲気のまま
我が家へ帰って行った・・・。