第10話「買われた日」


リバービューのとある倉庫




「おら、さっさと入れ」




「ここでおとなしくしていなさい。」

「明日の朝には発ちますからね!」





「・・・・・・・」







バタン・・・・・カチリ







「・・・・・・」












「ハハハハハハ」



「全く、このご時世に自ら自分の子供を売る親が
いるんですからねぇ」

「涙が出そうでしたよ、ハハハ」



「兄貴もサイッコーでしたぜ!
『逃げないでくださいね〜』なんてゾッとしましたよ」

「フフフ、私は紳士ですからね、
子供に暴力なんて、そんな野蛮な事はしたくありませんよ」



「明日の朝にはこの町を発ちますからねぇ、
このまま部屋でおとなしくしていてくれる事を願いますよ」

「・・・・・・、
でも意外にすんなり付いてきましたね、あのガキ・・・」



「そうですねぇ、あの様子では父親に未練はなさそうですが・・・・」

「そうですかい?
最後に父親を呼ぼうとしてやせんでした?」



「フフ、見なかったのですか?
あの少年の諦めた顔を・・・・」・・・・ガガガ・・・・

「相当あの父親にひどい扱いを受けてきたのでしょう・・・」




ドガガガガ・・・・




「あの少年も、いつかこうなる事がわかってたんじゃありませんか?」

「まぁ私達としては、おとなしく従ってくれるのは
楽なんですがね・・・
しかし、静かな者ほど腹に何を抱えてるかわかりません
からねぇ、油断でき・・・・・」ドドドドド・・・・・



「・・・ッチ、さっきからうるせぇな・・・
すいやせん、兄貴」

「外で何をしているんですかね?」



「全く、どこの誰でしょうね?
こんな夜中に迷惑な・・・」

「なんか地面を掘るような騒音ですね、
人が集まってきたらやっかいな事になりませんかね?」




「それはやっかいな事になりそうですね、
早めにカタをつけてくるとしましょう」


「ヘイ」







「なんだろ・・・
外が騒がしいな・・・・」







ギギギギギッ


「ふんがぁぁぁ!!」

「オ父様、ソロソロ帰リマセント 住民タチガ集マッテ
キマスヨ?」


「ふぐぐ・・・・
もうちょっと・・・待てって・・・ふぐぅ〜」

「もうちょいで宝石が採れそうなんだよ!」



「シカシ、今日ハモウ・・・・」

「ちょっと!!」



「こんな夜中に何してんのよ!
うるさいったらないわ!!」

「ウワッ」


「まったく、近所迷惑よ!!
・・・・って、アンタ公共物破壊のドン・パッチ!!」






ガチャ





「アナタですか、さっきから騒音を響かせているのは・・・!」

「・・・ボソ・・・ド、ドン・パッチよ・・・!
あのイカレ発明家のドン・パッチだわ・・・!!」


「?」




ボソ・・・深く関わる前に早く逃げましょう!」
ボソ・・・・えぇ、そうね」

「なんだよ、アンタら・・・
ここらじゃ見ねぇ奴らだな」




「貴方、今何時だかわかってますか!?
良い子は寝る時間ですよ!!」

「あぁ?俺が良い子だとでも思ってんのか!?
この黒ヒゲ危機一髪共がっ!!」




「な、なんですって!?私達を誰だと・・・!」
「おう、誰だよ。」

「あ、兄貴・・・・それ以上は!」
「ふぐぐ・・・」















「なんだ?
やけに外が騒がしいな・・・」

「・・・・・・・・、
あれ、この間のおっさん・・・?」






「おーい、おっさん!」

「おっさーーーーん!!!」



「おっさんってば〜〜〜〜!!」

「ン?ドコカラカ、声ガ・・・・」



「オヤ?アソコデ、誰カガ呼ンデオリマスナ?」

「ン?アノ少年ハ・・・・・誰デスカナ・・・」



「オ父様、アソコデ少年ガ呼んでオリマスゾ?」

「あぁん?誰だよ」





「おっさ〜〜〜〜〜ん!!!」




「あぁ?おっさんって・・・・・
ん?アイツは・・・・」

「この間、何も言わずにさっさと帰ったガキじゃねぇか!」



「チッ、あのガキッ!
おとなしくしてろって言ったのに!!」

「急いで、あの少年を黙らせてきなさい!!」
「ヘイ」



「おい、ちょっと待てよ!
どーゆう事だ?
なんであのガキがこんな所にいんだよ!!」

「しかも『黙らせてきなさい』だぁ?
アイツをどーするつもりだよ、お前ら!」



「貴方には関係のない事ですよ」

「なにぃ〜?」



「おい、ティム!
あの黒服の奴追いかけて、あのガキ連れてこい!!」
「エ・・・シカシ・・・」

「早く行けって!!」


「ワ、ワカリマシタ!!」ゴォォォォ





「テメェら、一体何を企んでやがる・・・!」

「企むだなんて人聞きの悪い人ですねぇ、
私達は何も企んでいませんよ。」


「あのガキをどーするつもりだって聞いてんだよ!」





「どうするも何も、アナタには関係のない事でしょう」

「あーそう、どーしても言わねぇんだな?」







「んじゃ、こーだ!!」ガバッ

「あ、ちょ・・・!」



ドスンッバタンッ


「や、やめ・・・」

「オラオラッ」ドカッボグッ


「うぐっ・・・ふぎゃっ」





「のわ〜〜〜〜〜」ピュ〜〜ン

ドタドタッ・・・・







「うがぁ〜〜〜、き、貴様ぁ・・・」

「どーだ、コラ!
言う気になったか、あぁん?」


「クッ・・・・・」










その頃、倉庫の中では・・・


良いシムポットのはずのティムが
暴れまくっていた・・・・。

「うわぁぁ〜〜〜、なんだコイツ〜〜!!」



「ア、ヨイショ〜」ギュイーンギリギリギュワ〜

「ぎゃああぁぁ、助けてくれ〜〜〜!!」



「サァ観念スルノデス、悪党ドモ!!」

「わぁぁ、ごめんなさい〜
許して下さい〜〜」


「オヤ、本当ニ悪党ダッタノデスカ?」
「あうあう・・・」ガクガク





黒服の男はティムに恐れをなし、ガクガクと震えていた・・・・。












「アノ子ガイタノハ コノ部屋デスネ?」

「・・・ム、鍵ガ カカッテイルヨウデスネ?」








「あぁ?それじゃあ、あのガキ
実の父親に売られたってコトか?」

「そーですよ!
さっきからそう言ってるでしょうが!」



「だから邪魔しないで下さいよ。
朝になったらココを発つんですから・・・」




「ちょっと待てよ・・・・
ってコトはあのガキ、もうこの町からいなくなるってコトか?」

「えぇ、噂じゃ結構な悪ガキだったみたいじゃないですか。」


「え、そーなの?」



「私共はよく知りませんがね・・・、
イタズラ好きで、よく父親が被害にあってたみたいですよ?」

「ふーん、でも自分の子供売るってどーなの?」


「さぁ?私共は仕事ですので私情には興味ありませんね」
「あそ・・・」





「んじゃあ、あのガキ俺が買い取るよ」

「え!!?何言ってんですか!!
しかもその顔・・・・本当に欲しがってる顔ですか!??」




「だってあのガキ、この町からいなくなっちまうんだろ?
(あのガキいなくなったら、町に迷惑かけてんの
俺だけになっちまうだろうがっ)」

「それとも、もう誰か買ったってのか?」


「いえ・・・・、しかしですねぇ
人一人買う事がどんな事かわかってますか?」

「そんなホイホイ出せる金額でもありませんよ?」




「・・・・わかってるって。
(ッチ、こいつ俺に説教する気か?)」

「(カセリンだって、俺の子供じゃねぇし
ティムやロサリンダだってロボットだしな・・・・
一人増えたって変わらんだろ・・・)」





「し、しかし、今ここで決めるわけには・・・・」

「あぁ?じれってぇなお前・・・・
じゃあさっきのシムポットと交換ってのはどうだ?」


「えっ!!!」












その頃、


噂のシムポットであるティムは・・・

ドカンッ


「うわっ」



「大丈夫デスカ?怪我ハ アリマセンカ?」

「・・・・あ、あぁ大丈夫・・・・」



「何故コンナ所に閉ジ込メラレテイタノカ シリマセンガ
トニカク今ハ ココカラ出マショウ!」

「あぁ・・・・」












ティムに助けられたギルバートは、
黒服の男が来る前に急いで外へ駆けて行った。






バタンッ

「おっさん・・・!」



「おっさん、助かった・・・ん?」

「アイツだったら、あのガキより価値あんぞ?」



「そ、それはまぁ確かに・・・」

「いい話だろ?じゃ交渉成立だな!」




「おーい、ティム。
こっち来いよ〜〜」

「??」



「ティム、すまないが・・・・
お前とはたった今ココでお別れだ。」

「エッ!ナンデスッテ!?
ドウユウ事デスカ、オ父様!!」



「ほ、本当に大丈夫なんでしょうね?」

「不良品だったじゃすみませんよ!?」




「テメェ、俺の造ったモノにケチつける気か!?
上等だコラ、もう一度締めてほしいらしいな?」

「貴方、有名な発明家らしいですが
チンピラみたいな人ですねぇ・・・!」


「あ?俺の事知ってたのかよ・・・」






「エ、ナンデスカ?
ドウユウ事デスカ?」

ティムは自分がギルバートと交換で
売られた事など知る由もなかった・・・。






「そんじゃティム、元気でやれよ!」

「エッ!?オ、オ父様!??」



「よう、大丈夫だったか?
そんじゃ帰ろうぜ!」

「あ・・・・・、俺は・・・・」





ギルバートは自分の家になど帰れるワケがなかった・・・・。







「お前、たった今から俺の息子だから」

「はっ!??ど、どうゆう・・・・」


「どうゆうって、そーゆうこったよ。
帰んぞ、付いてこい」

「・・・・・・・」



「ぐへへへ・・・
よしよし、危うく俺だけが町の悪モン扱いに
なるトコだったぜ・・・」

「そうそうこの町から出られると思うなよ?
お前も道連れだぜ・・・・ぐふぐふ、ぐふふふふふ♪」





「ナンデスッテ!?私ガ アナタミタイナ人間ニ
売ラレタデスッテ!?」

「私ヲ 扱エルノハ オ父様ダケデスヨ!!
私ガ 人間ノ言イナリニナルナンテ
コレ程ノ屈辱 アルモノデスカ!!」



「キ〜〜〜!!
こ、このポンコツめっ!やはり不良品じゃないですかー!!」

「不良品デスッテ!?
ハッ!コノ私ヲ不良品ナドト・・・・
ヤハリ、アナタハ私ノ価値ヲ全ク解ッテイマセンネ!!」


「ムキ〜〜〜!!」








「あ、あの・・・・おっさん・・・」

「もしかして・・・・
俺を買った・・・・とか・・・?」



「あぁ?誰がテメーなんか買うかよ。
ティムと交換しただけだよ」

「それって・・・・」



「あ、そういやお前、名前なんだ?」

「・・・・・ギルバート・・・」




「はーん・・・いい名じゃねぇか。
俺なんかドン・パッチだぜ?」

「・・・・いいじゃん(悪党みたいで)」


「お前今、悪党みたいって思わなかった?」


「い、いや・・・・」




「まぁいいや。
ギルバート、前の親父の事は忘れて
これからは俺の事を本当の父親だと思えよ!」

「・・・・・・・・・・」




「おい、どうしたよ?
呼べよ、お父様って」
「ヤダよ・・・・・」
「テメ・・・・!」

「オ父様〜〜〜!!」



「オ父様、ヒドイデスヨ!
何故私ヲ売ッタリシタノデスカ!!
私ハ オ父様ノ息子ジャナカッタノデスカ!?」

「いや、そーなんだけどさぁ〜」



「だって俺金持ってないし〜
お前を売るしかなかったんだよ・・・」

「イイ訳ナンテ 聞キタクアリマセン!!
大体ハ 分カリマスガ、ソレデモ自分ノ息子ヲ売ルナンテ
ヒドイデスヨ!!」


「ぐ・・・・!」







「・・・・・・・・・」

「(この人もアイツと同じじゃないか・・・・・)」





「(どこに行ったって、何も変わらない・・・・)」







「(俺は・・・、この人の元に行って正解なのか・・・?)」





「(・・・・・・・結局、
俺は・・・・周りに流されて生きて行くしかないのか・・・)」





「お、落ち着けってティム〜・・・
それよりお前、あの黒服の男はどうしたんだよ」




「アァ、ソレナラ・・・・
丁重ニ オ断リサセテ頂キマシタ。」

「ふーん、よく返してくれたもんだ」
「ハイ、親切ナ オ方デシタ。」


「うぐ・・・・」















朝が近くなり・・・・







パッチはギルバートとティムを連れ、
自宅に向かう・・・。







「・・・・・あれ、よく考えたら
コイツの保護者って俺じゃん・・・・」





「・・・・って事は、
コイツが悪さしたら・・・・・・」

「・・・・・・・・」