第11話「新しい家」


ギルバートを連れ、我が家に帰ってきたパッチ。




「ウマイか?」

「ウマイよ」



「お、おお・・・そうか!
どんどん食えよ!」

「あぁ・・・・」




「(ウマイな、コレ・・・)」モグモグ

「(まぁ、メシが食えるだけでもあの家よりはマシか・・・
そう悪い人じゃなさそうだし・・・・)」








カチャ


「パパ、おはよ〜」



「んん!!?」





ガタッ


「カ、カセリン!!」

「・・・・・・」





「(ヤッベ、どーしよ。
コイツの事、なんて言おう・・・・)」

「(シムポットと違ってコイツは人間なんだよな・・・)」




「え・・・・
な、なんでアンタがここに居るの!?」

カセリンは、朝起きると食卓にギルバートがいて
訳が分からなかった。




「・・・え、えっと〜・・・・(な、なんて言えば・・・)」

「ゴホッゴホッ(そ、そーだった・・・コイツの親なんだった・・・・)」



「(何コレ・・・、どーゆうこと!?)」

「(しょうがね〜、そのまんま言うしかねぇか・・・)」




「あ〜、あのな〜カセリン〜」

「コイツ、ギルバートって言うんだけどさ〜・・・」



「知ってるよ。同じ学校だし・・・」

「あ、なんだ知ってる奴?
なら話は早ぇな。」



「コイツ、うちで暮らす事になったからさ」

「えっ!?な、何ソレ!!なんで!?」



「詳しい事は後で話すよ」

「だ、だって、コイツとんでもない奴なんだよ?
人の家を放火しようとしたりするような奴なんだよ?」


「え・・・、ほ、放火?」



「と、とにかく詳しい事は学校から帰ってきたら話すからさ・・・」

「・・・・・・、わかった。
じゃあ帰ってきたら、ちゃんと聞かせてよね、
何がどーしてこーなったのかをね!!」


「お、おう・・・」





カセリンは学校から帰ってきたら、
ギルバートが何故うちで暮らす事になったのか
詳しい話を聞く事になっているのだが、

パッチがああ言っていたのだから、
ギルバートがうちで暮らすことになるのは
変わらないんじゃないかとカセリンは思っていた。




「なんで・・・・
冗談じゃないよ、あんな奴・・・・」

「何があったのかしらないけど、
一緒に暮らすなんて、絶対イヤだ!!」




「ま、そう落ち込むなよギルバート。」

「・・・・・・、いいよ本当の事だし」



「え、何お前、本当にそんな事したのか?
ま〜俺も人に説教なんてするような大層な人間じゃねぇが・・・」

「ここにいる以上、人様に迷惑かけるような事は
二度とするんじゃねぇぞ!」




「謝るのはお前の保護者である俺だからな・・・
俺を人に頭を下げさせるような屈辱的な事だけは
させるんじゃねぇぞ!
ていうか、俺に迷惑はかけんなよ?」

「(パ、パパ、
間違いじゃないけどさ・・・)



「わかったな?絶対俺に迷惑かけんなよ!?
俺は他人なんかに頭下げたり謝ったりすんのは
絶対イヤだかんな!!」

「わ、わかったよ・・・・」


「絶対だぞ!俺に迷惑かけたら追い出すかんな!」




「(パパ、必死・・・)」











そして、






「いきなりだが、ここが新しい家だ!」

「どーだ、前の家より大きいだろ!!」



「パ、パパ!この家どーしたのよ!!」

「それがな〜、この間地下の洞窟で知り合った男から、
滅多に家に帰る事がないから住んでいいと言われたんだよ。」



「ソイツ、地上より地下にいる方がいいんだと。
だからタダで貸してくれるってさ」

「人数増えたし、丁度いいだろ?
それに家賃タダだぜ!」


「それはいいね!」
「だろ〜!」





「さ〜て、早速風呂使わしてもらうか〜♪」

「部屋は適当に振り分けしといたから〜
好きに使え〜」


「うん!」




「フィニー♪
新しい家だよ〜〜!前より大きいね〜」

「ワフッ」



「・・・でも、あたし・・・
前の家の方がこじんまりしてて好きだったな・・・」

「ワフ・・・(お嬢、ワシもです)」




「フンフ〜ン♪
前の風呂場より広いし、いいな」

「カセリンも気に入ってくれたみたいだし、
良かった良かった!」














ガチャ

「ここがあたしの部屋か〜」



「・・・・って、アレ・・・?
ここって車庫じゃない」

「しかも寝袋・・・・・」




「あ、あのさ・・・
一つ聞いてもいいかな?」

「なんだよ」



「なんでアンタと一緒の部屋なのよっ!!」

「しらねぇよ、俺に言うなよ」




「もう、パパ何考えてんだろ!」

「そりゃ、シムポットと同じ部屋じゃ
色々不都合あるからしょうがないけどさ」




「よりによって、アンタと・・・・
仮にも男・・・しかも他人と一緒の部屋にするなんて、
何かあったらどーすんのよ!!」

「何もしねぇよ・・・」



「お前みたいな幼児体型、タイプじゃねぇし」

「ムカッ、そりゃ良かった!!」




「大体あたしまだ殴られた事、許してないんだからね!」

「なんだよ、しつけーな・・・
この間謝っただろ?」



「なにそれ、全く反省してないわね!
自分がどんなにサイテーな事をしたかわかってない!!」

「ただ謝れば許してもらえるとでも思ってるワケ!?
あたし絶対許さないんだから!!」



「大体ね、ナンパに失敗してすぐ暴力って、
チンピラじゃないの!
そんな奴と一緒に暮らせるわけないじゃない!!」

「じゃ、どーすりゃ許してくれんだよ」





「わかった。
じゃ、気の済むまで殴れ。ほら」




「え・・・・・」

「許せないんだったら、好きなだけ殴れよ。
気が済んだら、この件はもう許してくれよな。
俺も、悪かったって思ってんだからさ・・・」



「ほら、好きなトコ殴れよ」

「や、ヤダよ・・・。
・・・もう、いいよ、許すよ・・・。」




「殴りゃあいいのに・・・・」

「あたしは、アンタみたいに暴力はしないもん」


「そうッスか・・・」








「(・・・・・・ま、そう悪い奴でもないのかな)」

家庭の事情はよくわからないが、実の父親に人買いに
売られてパッチが引き取った事を知ったカセリンは、
しぶしぶギルバートを家に置く事に承諾する。







「あーぁ、まさかこんな所で寝袋で
寝る事になるなんて・・・・」

「大きいのは家だけなのね・・・・」






















深夜、










「ZZzzz〜・・・」







「・・・・・・・」








ガチャ































その夜、ギルバートはこっそり家を抜け出し、

家を出て行った・・・・。


























バタバタ・・・・

「はぁはぁ・・・」




「ギ、ギルバート!!」



「ギルバートってば!!」





「ちょっと待ってよ、ギル!!」

「・・・・ッチ」



「ったく、なんだよ」

「なんだよじゃないわよ!
こんな時間にどこ行くのよ」





「どこだっていいだろ・・・・」







「も、もしかしてさ・・・・
家、出てくの・・・・?」

「・・・・・・・・」





「・・・・あ〜・・・、
お前の家がイヤとかじゃなくてだな〜・・・」

「あたしも行く!」


「はっ!?」



「な、何言って・・・・」

「家出てくなら、あたしも行く!
いいでしょ?」




「いいでしょって・・・」

「ダメって言われても行くもん!」





「あーもう、好きにしろよ」

「・・・・・・・」







「・・・好きにするもん」






「待ってよ〜」






この日、カセリンとギルバートは
二人で家出をした。