第6話「ホームレスな少年」


「フィニー?」





「ワンワン!(お嬢〜、あっしは悔しいっす!)」

「フィニー!ついてきてたの?」




「・・・うわ、こっち来る・・・
ど、どうしよ」

「バフッ(にーちゃん、お嬢を慰めたってくれや)」


「んな事言われても・・・」





「フィニー、誰かと一緒なの?」



「え・・・・・、な、なんで・・・・」

「あ〜、えっと・・・・」


「バウバウ(にーちゃん、がんばれ!)」






「・・・もしかして、今の見てた・・・・?」

「お、おう・・・・」






「いや〜コワイコワイ。
付き合ってたのは金目当てだったなんて、ヒドイ女だぜ」

「ってことは、金持ちなら誰でもいいのか?
金払ってくれる男なら、誰とでも付き合うって事か?
とんだ尻軽女だぜ」



「ムカッ!ヒドイよ!!
アンタってサイテーッ!!」

「なんでそういう言い方するの!?
アンタにあたしの気持ちなんてわかるわけないじゃない!!」





「あたしはあたしなりにカルロスくんの事、
好きになろうとしたもん!」

「どーせあたしはヒドイ女だよ!わかってるよ!」




「尻軽女ぁ?
じゃあその女を殴るアンタはなんなのよ!」

「あたし、忘れてないんだからっ!アンタに殴られた事!!
絶対許さないからっ!!」


「ちょ・・・!」



「謝ったって許さないッ!
ヒドイ事言うアンタなんてキライだよッ!もう消えて!!」

「わ、わかったから落ち着けって・・・!」



「悪かったよ。この間は殴って悪かった!」

「ホントに悪いと思ってるんでしょうね?」
「お、思ってる思ってるって!」






「フン、ヒドイ事言った罰よ!
なんかおごってよ」
「はぁ?なんで俺がオゴらなきゃならないんだよ」

「お腹空いたんだもん」
「しるかっ」



「それより、アンタはこんな所で何してたのよ?」
「え・・・、いや、俺は・・・・」

「お前にカンケーないだろ」






「よしよし、フィニー♪
お腹かいてほしいのか?」

「バフバフン♪」




「前から思ってたけど、
ギルバートって犬好きなの?」

「・・・・・・・・別に」


「ワゥワゥン♪」




「ふーん・・・・
もう帰るよ、フィニー」

「ワフワフ・・・(ゼェゼェ・・・)」



「じゃあね、ギルバート。
フィニー、おいで!」ダッ

「ワゥ(にーちゃんもアホよなぁ、
わざわざあんな言い方しなくても良いじゃろうに・・・)」



「バフ(お嬢が待ってるけん、じゃあの)」

「あぁ・・・またな」




「ワンワン!(お嬢〜、待ってくれ〜い!)」












「ワンワン!(お嬢〜〜〜!)」

「(ホント、腹立つアイツ・・・
パパと似てると思ったけど、全然ちっとも似てないんだから!)」
















その日の夜、




「ギルバート、また親父さんを怒らしたんだってな?」

「・・・・・・」





「そんな事ばっかしていると、家から追い出されるぞ!」

「言いたい事あるなら、ハッキリ言った方がいいぜぇ?」




「ほら、またメシ抜きなんだろ?
これでも飲みな、メシはこの後作ってやっから」

カラン♪





「おう、いらっしゃい」

「マチルダじゃねぇか」



「マスター、いつものくれる?」
「おう」

「あ、ギルバート!」



「アンタ、何いいかげんな事言ってんのよ!!」

「な、なんだよ、いきなり・・・」


「なんだじゃないわよ!!
アンタ、メアリー達にあたしと寝たとか言ったんだって!?」

「冗談じゃないわよ!誰がアンタと寝るかっ!!」



「あ、あれはアイツらがウゼェから・・・・」

「それにしても、もっと言い方あるでしょー!
あたしがどんだけ辱められたと思ってんのよ!!」



「あの子達、噂好きだからあることないこと
言いふらすの知ってんでしょーがっ!!」

「わ、悪かったって・・・・」




「もう!家が近所だから、お情けでベット貸してあげてるってのに・・・」

「これ以上変な事言うなら、他をあたってちょうだい!!」


「え〜〜〜・・・・」

「大体、女の子のベット使うなんてずぅずぅしいのよ。
アンタは草むらで寝てな!」



「マスター、悪いけどあたし帰る!また来るわ」
「お、おう・・・」

「おい、マチルダ〜〜」
「うっさいわね、もう家に来ないでよね!」






「・・・・ッチ」







結局、マスターにご飯を出してもらう前に
バーを後にしたギルバートは、

家とは反対方向に進んでいた・・・。






家に帰れば、あの父親がいる・・・
食べ物も、自分が寝る所も何もない家・・・

それを見かねた、近所に住むマチルダという少女に
ベットを借りたりしていたギルバートだったが、




チルダを怒らせてしまい、

とうとう野宿するしかないと思うギルバートだった・・・。










「はぁ・・・、
また夜がきちまった・・・。」

「今日は・・・どうしよう・・・・。」



「・・・・あまり外でウロウロしてると
パトカーの巡回に見つかっちまうし」

「10時になる前に、寝れる場所見つけないと・・・・」



「どこかないかな〜・・・・」

ギルバートはあてもなく、夜の町を徘徊するのだった・・・。






「あ、こんな所に公園があるな・・・」




「はぁ、腹減ったな〜・・・
さっき食わないで出てきちまったし・・・」

「なにか食べ物ないか、寄ってみるか・・・・」






「おっ!
こ、これは・・・!!」

ギルバートは公園に入ると、すぐに作物を見つけた。




「こ、ここ公園だよな・・・・?」

「勝手に盗っても・・・・」



「ま、いいや!
誰もいねぇし、見つかる前に盗っちまうか〜」

「あ〜美味そう♪
まさかこんな所に食い物があるなんてなぁ〜!」



「やべ・・・、
嬉しくて鼻水出てきちまったぜ・・・」




ギルバートはそこに生っているトマトを頂く事にした。

ゴソゴソ・・・・



「じゃ、いっただっきま〜す!」

ギルバートは不敵な笑みを浮かべながら
トマトを食した。



ガブッ・・・・モグモグ・・・

「う、うめぇ〜!生き返る〜〜〜
トマトがこんな美味いなんて・・・・くぅ〜〜!!」





「向こうにはリンゴの木があるな・・・」

「よし、ここを俺の秘密基地にしよう♪
これで当分食べ物には困らないな・・・!」








「おっ、こんな所に良さそうなイスがある・・・」




「こいつは寝床に丁度いいな。」

「使わしてもらうか・・・」



「よいしょ・・・」

「あ、ちょっとアンタ、
そこはあたしが今使おうとしてたのよ!」




「はぁ?早いもの勝ちだろ」

「いいからどきなさいよ!」



「やだね!
俺だって眠いんだ、今日は俺が使わしてもらう」

「んま!」


「グー・・・スー・・・」

「ZZZzz・・・・」



「っま!もう寝ちゃったの?」

「・・・・この子、まだ子供よね?
なんでこんな夜遅くに、公園で寝るのかしら・・・」



「フゥ、しょうがないわね。
何か家庭の事情があるのかもしれないし、
今日は引き下がるしかないわね。」

「まったく、こんな子供をこんな時間までほっとくなんて・・・・」




「ZZzzz・・・」





ギルバートは、この公園で一夜を明かした・・・。