第十一話「離婚の危機」

セル博士の家では、両親の争いが絶えず続いていた・・・。



「いい加減にしてちょうだい!
もう、こんな生活は我慢できないわ!!」

「トニア・・・・」



「私が近所からなんて呼ばれてるか知ってる?
”詐欺のおばさん”ですって!!」

「もう私耐えられない!あなたと別れるわっ!!」



「お、落ち着いて話を聞いてくれ、トニア・・・・」

「この仕事はまだ世間には好評ではないが、いつか認められる日が来る!
それまで待ってくれ・・・!!」



「いつかっていつよ!
男っていつもそう・・・・いつかいつかって、叶うかわからない夢みたいな事ばかり・・・
私は今現在の話をしているのよ!!」

「だから言ってるだろ!この仕事は誇りある仕事だ!!
誰かがやらなくてはいけないんだ!!」




「家族を犠牲にしてする仕事なの!?そんなに家族より大事!?」

「そんな事言ってないだろ!!」




「(父さん・・・・母さん・・・・)」























――ウェストレーク工業学校――







めずらしく学校に最後まで残っていたアッサム、
ネルに昨日の話について聞こうと残っていたのだっだ。

「あ、アッサムくん」



「めずらしいね、アッサムくんが放課後まで残ってるなんて・・・」

「お前を待ってたんだよ・・・・
なんか話せる時がなくってさぁ、こんな時間になっちまった・・・・」



「お前、なんで休み時間まで机にかじりついて勉強してんの!?
そんなに楽しいわけ?」

「楽しいのもあるけど、楽しくないのもあるね」



「どーこが楽しいんだよ、先公がわけわからない言葉でくっちゃべってるだけじゃん」

「・・・・あれ、アッサムくんてそんなに不良生徒だったっけ?」


「不良じゃねーし・・・」
「じゃなんなの?ヤンキー?」


「ヤンキーって・・・・・」







「実は私も勉強ってそんなに得意じゃないんだ・・・、
でも、父さんがあーゆう仕事だから、いじめられないように勉強を頑張ってるの・・・・」

「あぁ、そっか・・・・
努力家なんだな・・・・」



「努力家とか、そんな言葉でまとめてほしくないんだよね・・・・」

「あ、ゴメン・・・(怒られた・・・)」






「あ、そうだ!
私、アッサムくんに勉強教えてあげるよ!!」

「え・・・・いーよ・・・」



「いいからいいから!t父さんたちの事、協力してもらうんだから
このぐらい平気だよ!」

「・・・ボソ・・・俺が平気じゃないんだけど・・・・」



「ほら、宿題出して!」

「ふぁーい・・・(もしやさっきの仕返しか・・・?)」




アッサムはネルと一緒に宿題をする事になった・・・。













「あのさ・・・・」
「ん?」

「ごめん、私のせいでアッサムくんに迷惑かかるかも・・・・」


「え?」





「・・・ボソ・・・ねぇ、なんであの二人、一緒に宿題してんの?」

「やだぁ、怪しい〜〜!」
「絶対できてるよね〜〜〜」





「ほら・・・」

「あー、うん・・・」




「・・・・そろそろ帰るか」

「あ、待って。私も帰る・・・」ダッ





「・・・・・・・・・」

「・・・ボソ・・・ほらぁ、一緒に帰るみたいだしぃ〜」


「クスクス・・・」





「・・・なんですぐそーゆう事言うのかな・・・」





「・・・なんか、女ってうぜー・・・」

アッサムは、クラスで噂をする女子たちに対し、
苛立ちを覚えた・・・。

















「アッサムくん、待って〜〜!」



「歩くの速いよ・・・」

「あ、ごめん・・・(って、一緒に帰る約束してたっけ・・・?)」



「あのさ・・・さっき思い出したんだけど、
アッサムくん、私に話があって待っててくれたんでしょ?」

「あ〜、そーいえば・・・・」



「ごめんね、何?」
「いや、いーよ・・・」

「え、でも・・・・私のせいで迷惑かかっちゃったし、
言いたい事あるなら言ってよ・・・」


「迷惑って・・・・、別にさっきの気にしてねーし」





「あ・・・・、そうなんだ・・・・」

「(噂とか興味ないのかな・・・
アッサムくんて、我が道を行くって感じ・・・・)」



「(それとも、私に興味ないのかな・・・・)」








「ねぇ、アッサムくん。聞いてくれる?」

「・・・・ん?なんだよ」




「父さんと母さん、今日も朝からケンカしてたんだけど、
母さんがとうとう『別れる』って言ったんだ・・・・」

「それで、父さんがなんとか止めたんだけど、
結局またケンカが始まっちゃって・・・・」



「ねぇ、どうしよう・・・・
本当に別れちゃうかもしれない・・・」

「(わ、別れるですって!?)」



「私、父さんの仕事・・・嫌いじゃないんだけどなぁ・・・・」

「・・・・・・・・」



「あのさ・・・、それセル博士に言ったの?」
「え、ううん・・・」

「お前、離婚してほしくないなら
ちゃんと両親と話しろよ」



「え・・・でも・・・夫婦の問題だし・・・」

「家族の問題だろ!何遠慮してんだよ・・・。
それを言うなら他人の俺がしゃしゃり出んのもおかしいだろっ!」



「自分の気持ち、ちゃんと両親にぶつけろよっ!」

「自分の気持ち・・・」
「そうだよ!
それでも離婚する事になっちゃったら、俺も一緒に悩んでやるからさ・・・!」



「・・・・・・うん、わかった!
私の気持ち、父さんと母さんにぶつけてみる!」

「お、おう・・・頑張れ!(意外にあっさりだな・・・)」



「ありがとう、アッサムくん。
やっぱ話せる人がいると良いね!」

「お、おう・・・(コイツ、そんなにクラスの奴らからハブられてたのか・・・)」


















――深夜――



アッサムはセル博士と共に、ゴースト退治をしに来ていた。




いつも通り仕事をするセル博士

しかし、アッサムは離婚の話を聞いてからというもの、
セル博士に聞こうか悩んでいた。





「関係ない俺が聞くのもなぁ〜・・・」














――翌日――



「あ、詐欺のおばちゃん!」

「んまっ!!」







母、トニアが外で子供にそんな事を言われている頃



父のセル博士は、さっき仕事から帰ってきて寝に入っていた。

「う〜ん、チキンが食いたい〜・・・ムニャムニャ」







子共にまで”詐欺のおばちゃん”と呼ばれ、

母トニアは、我慢の限界を迎えていた・・・。





「お母さん、今日仕事は?」

「・・・・・・・」



「お母さん?」

「・・・・・・・・」





「ミスティー・・・・」

「そろそろ荷物をまとめておきなさい。」




「えっ!?お、お母さん・・・・」



「ミスティー、どっちについて行くかはあなたの好きにしなさい。
ネルにもそう言っておいて・・・・」

「お、お母さん・・・・」















――夜――


「お姉ちゃん・・・」

「ミスティー、どうしたの?」



「おねえちゃん・・・・・ぐすっ」

「ミスティー・・・」




「お母さんが・・・・荷物をまとめておきなさいって・・・・ぐす
もう・・・・限界みたい・・・・」

「え・・・それ本当なの?ミスティー・・・!」



「どうしよう、お姉ちゃん・・・・
お父さんもお母さんも離れたくないよ・・・・グスン」

「ミスティー・・・・、泣かないで!
大丈夫だよ、別れたりしないよ!」


「でも・・・・」




「大丈夫だよ、ミスティー。二人でお父さんとお母さんを説得しよう!」
「お姉ちゃん・・・」

「ちゃんと私達の気持ち、二人に伝えよう!
それでもダメだったら、家出でもなんでもして二人で生きてこう!ミスティー!」


「うん・・・お姉ちゃん!」






ネルとミスティーは、両親に自分たちの想いを伝えようと固く誓い合った。