第十話「ゴーストハンター、セル博士登場」

ある夜、アッサムはリルと一緒に
墓地へ死の魚を釣りに来ていた。


「リル姉、早く釣ってよ〜」

「まだ来たばっかりじゃない、0時過ぎじゃなきゃ
死の魚は現れないのよ!」



「も〜絶対幽霊出るって〜〜〜」

「う、うるさいわね・・・もうちょっと待ちなさいよ!
釣りは忍耐が大事なのよ!!」


















ガサツ

「!!!!」












「い、今・・・何か音しなかった?」

「き、聞こえなかったけど・・・・」




「アンタ見てきなさいよ・・・」
「え・・・ヤだよ・・・・・・」












「ったく、だから早く帰ろうって言ってんのに・・・・」

「幽霊が出たらどーしてくれんだ・・・」ブツブツ





「確かコッチの方で音が・・・・」

「・・・・ん?誰かいる・・・・」






「ったく・・・こんな夜中に墓地で何してんだよ・・・・
って、俺もだけどさ・・・」

「ちょっと待てよ、幽霊じゃないだろーな・・・」







「お、おい・・・・
そこにいんの、誰だ・・・・?」

「・・・・・え?」




「あれ、アッサムくん・・・?」

「え?」



「お前・・・・同じクラスのネル・ボーガン?」

「うん・・・・」


「(つか、どっかの舞踏会から出てきたような格好だな・・・・)」





「こんな夜中にどーしたの?」




「それ、俺のセリフなんだけど・・・・」

「ちょっとアッサム、その女の子誰?」



「あ、同じクラスの・・・・」
「もしかして、アッサムくんのお姉さんですか?私、ネル・ボーガンって言います。」

「アタシ、リルよ。よろしく!」




「アッサム、あんまり遅いと明日起きれなくなるわよ?
もう帰りましょ。」

「あれ、死の魚は?」
「もう釣った。」
「はやっ」





「・・・・・・・・・」





















テリーがビジン家に越して来て、
結婚前のパーティーを開いていた時だった。



「ねぇ、なんで照明が赤いの?パーティーの演出とか?」

「いや、いきなりブレーカーが落ちちゃったみたいでね・・・
点けようとしたんだが、点かないんだよ」





アッサムがこの赤い明かりについて、疑問に思っている時、
一人の男がビジン家に近づいてきた・・・。




ガチャ


「おじゃましま〜す」

「もしかして、サプライズとか用意してるとか?」
「アンタ何言ってんの?」


「何って・・・だからサプライズ・・・」

「のわ〜!か、家具が宙に浮いてる〜〜〜!!どうなっとるんだぁ〜〜!!」



「ゴ、ゴーストだわ!!」

「え?ゴースト!?
あ、イスが浮いてる・・・!」


「君、そこをどくんだ!」



謎の男がズカズカと家に上がり込み、
宙に浮いたイスに向かって、何かの機械で吸い込もうとしていた。






「アンタ・・・一体・・・」

「私は世間じゃ、ゴーストハンターと呼ばれている・・・。」


「ゴースト・・・・ハンター・・・?」




「セル博士じゃない。噂は本当だったんだ・・・・!」

「セル博士?」
「えぇ、科学で博士の称号を頂いた人らしいんだけど、
いつからか、超常現象とかを研究し出して研究所を出て行ったって・・・・」



「そして、変な格好して人の家に勝手に上がり込み、
ゴーストがいるとか言って家の中を荒らしていくらしいわ・・・・」

「家の中で変な事が起きるのは、彼のせいって噂よ!」
「ふ〜ん・・・」



「ゴーストハンターか・・・・」






ゴーストハンター、
人々はセル博士と呼び、一時期は尊敬の目で見ていたが、
いつからか変質者のような目で見られるようになっていた。

町で、幽霊の仕業と思われるような現象が起こり、市長も頭を悩ませていたのだが
彼の登場で早急に解決する事が出来た・・・。
しかし人々は、人の家に勝手に上がり込み、変な機械で家を荒らしていく様を見て
このようなおかしな出来事はセル博士のやらせじゃないかという噂になっていた。






家具に憑りついたゴーストを全て除霊し終わって帰ろうとするセル博士

その後姿を見送るアッサムは、セル博士に少し興味を持ち始めていた・・・。



















それから数日が経った日の夕方・・・






「あっ、セル博士!」


町でセル博士を見かけたアッサムは、早速セル博士に話しかけようとしていた。



「あの・・・、セル博士ですよね?」

「・・・・ん?」





「・・・君は、誰だい?」

「俺、アッサムと言います。
セル博士、俺アナタの仕事に興味があるんです!ついてってもいいですか?」




「えっ!?わ、私の仕事に興味があるって!?
そ、そんな・・・どうしよう・・・・そんな事言われたの初めてだなぁ・・・・」

「セル博士って、幽霊とか怖くないんすか?」



「いやぁ、怖いよ!
でも誰かがやらなきゃね、町のみんなが安心して寝られないでしょ。」



「やっぱ頭の良い人は考える事が違うなぁ〜
人の噂なんて全っ然気にしていないんすね!」

「う、噂・・・う、うん・・・まぁね・・・・(結構気にしてるのよ、これでも・・・・)」




「・・・・・・あれ、父さん?」

「一緒にいる子って・・・・・」












それからというもの・・・・
アッサムはセル博士について行き、ゴーストハンターの仕事を見物するようになっていた。





「おいおい、アッサム。
お前なんでセル博士と一緒にいんだよ」

「ゴースト退治を見物してんだよ」


「お前・・・・頭おかしいんじゃないのか?」
「なんでだよ」

「だってセル博士って、この町で有名な頭のイカレた人だろ?」
「コル、お前バカだな」
「なっ!失礼なヤツだな、お前は!いとこと言えど年上に向かって・・・・!」
「噂で人を判断するようなヤツといとこではない」
「あーそーかい」


コル・カールトン、彼はアッサムの親戚である。
















――セル博士の家――





「父さん。」

「んぁ?」



「父さん、またゴースト退治に行ってきたの?」

「あぁ・・・モグモグ」



「父さん、いい加減にやめてよぉ〜
ゴースト退治なんて、世間じゃ良く思われてないんだよ?」

「何言ってんだ、ネル。
ゴースト退治は誇りある立派な仕事だぞ!市長から賞までもらってるんだ」



「そうだけどさ、
父さんがゴーストハンターなんかやってるせいで、
私学校じゃ、みんなに変な目で見られるんだから!!」

「いい加減、もっとまともな仕事してよ!」



「変な目で見るような人は、無視すりゃいいじゃないか」

「でも・・・・」




「そういや、アッサムくんはネルと同い年くらいだったな・・・・」

「・・・・アッサムくん・・・・。
父さん、やっぱりアッサムくんと知り合いなんだ・・・・」



「あぁ、私の仕事に興味を持ってるみたいでな、
最近よく一緒に現場に行ってるよ」

「そう・・・・・」


「なんだ、友達なのか?」

「ううん、クラスメートだけどあんまり喋った事ない・・・・」



「そうか・・・・
なら、彼と仲良くすりゃあいい」

「うん・・・・」


















ネルが本屋に本を買いに来ている日の事だった

「あ・・・・」


「あれはアッサムくん・・・・」

「本当に父さんの仕事に興味あるのかなぁ・・・・
どうゆうつもりなのか確かめなくちゃ!」




ネルは父の仕事のせいもあってか、人見知りで
自分から話しかけるようなタイプではない・・・。
しかし、父が笑い者にされるような事態だけは避けたいと思い、
勇気を出してアッサムに話しかけようとしていた。








「サボってばっかで今にも落第しそうな、成績Fのアッサムくん!」

「へ?」




「・・・・お前、学年トップのネル・ボーガン。
成績優秀な優等生が俺に何の用だよ」

「あのさ、ちょっと付き合ってくれる?」



「え・・・・」

「すぐ終わるから、そこで食事しよ」




「(え〜とコレは・・・・デートのお誘い?
んなワケないか・・・・)」

















手近な店で食事をしながら話をする事になった二人




「・・・・・(もしかして、この間、夜に墓地にいた事かな?)」

「・・・・・・・あのさ」



「セル博士って、私の父なんだ・・・・。」

「えっ!マジ!?」


「うん・・・」




「なんだ、そーだったのか!」

「うん、父さん
アッサムくんが父さんの仕事に興味を持ってくれたって
すっごく嬉しそうなんだ・・・・」


「へぇ〜」



「アッサムくんは、本当にゴースト退治の仕事に興味あるの?
面白半分で父に近付くのはやめてほしいんだけど・・・・」

「え・・・・・と・・・、そうゆうつもりは・・・・」



「じゃ、どうゆうつもりなの?」

「・・・・なんとなく、興味があっただけ・・・・
(やべぇ、なんか疑わられてる・・・・?どうしよう・・・)」




「本当に?ただ興味あっただけ?」
「そうだけど・・・・」

「だっていろいろ噂とかあるじゃない」
「噂とかどーでもいいよ」



「ほ、本当!?信じられないな・・・・」

「じゃ、どーしろってんだよ・・・・
別に何も企んじゃいないし、見物するのもダメなのか?」


「ううん、そうじゃなくて・・・・」




「うちさ・・・
父さんの仕事のせいで、今・・・母さんと離婚の危機なんだ・・・・」

「へぇ・・・・え?ちょ・・・マジ?」
「うん・・・・」



「いろんな噂のせいで母さんも近所の人から白い目で見られちゃって・・・・、
いつも父さんとケンカしてるんだ・・・・」

「そっかぁ・・・・」





「だからさ、アッサムくん。
二人が離婚しないように仲を取り持ってよ・・・」

「・・・・・・・・・」




「アッサムくん、なんとかしてよ・・・」
「・・・・・・・・・・・」










「・・・・あはは・・・お前、バカ・・・・?
なんで俺が・・・・」

「アッサムくん、父さんの仕事に興味あるんでしょ?
だったら協力してよ・・・・」


「協力って・・・・
それとこれとは話がちが・・・・」




「私もうどうしたらいいかわからないの・・・・
父さんの仕事のせいで友達もいないし、相談できる人いなくて・・・・・」

「二人が離婚しちゃったら私・・・・・」
「う・・・・」



こうして、何故かゴーストハンターの仕事に興味持っただけで
人様の離婚問題を解決しなければならなくなったアッサムだった・・・。