第十二話「チリかけた家族」
父は夕方から朝まで仕事で、母は朝から夕方まで仕事のため
家族で話す時間が中々ない。
そのせいか、結局話せず母トニアは家を出て行った・・・・。
「母さん!」
「ミ、ミスティー・・・
ごめん・・・母さん出てっちゃった・・・・」
「・・・・・・」
「ミスティー?」
「・・・・・・・」
「だ、大丈夫だよ!ミスティー。
母さん、すぐ帰ってくるよ!!」
「だって母さん、出てったって行くトコないもん!」
「だから、ミスティー・・・」
「もういいよ・・・」
「え・・・・」
「・・・ミスティー・・・」
「お母さんなんてキライ・・・・・」
「アタシだって辛いのに・・・クスン」
「いいもん、アタシだって好きにするもん・・・!」
「誰もアタシの事なんて・・・・」
一方、なつかしの誘拐野郎三人組は、
映画館へ来ていた・・・。
「おいチョウ、もう映画始まってんじゃねぇかよ」
「どーゆうこった、こりゃあ!」
「しらねーよ!お前が観たいって言うから来たんじゃねぇかっ!」
「あーもう、また始まった・・・・」
「お・・・・!ヒュ〜♪女の子発見〜!」
「・・・・ん?あの後姿・・・・確か近所に住んでる・・・・・」
「間違いないっ!ミスティーちゃんだ!!」ダッ
「こんな時間にどーしたんだろっ」
「ミスティーちゃぁ〜〜ん!!」
「え?」
「ミスティーちゃん、めずらしいね。
こんな時間に町にいるなんてさ!」
「あ・・・、あんた近所に住んでるキリーとかいう・・・」
「嬉しいなぁ〜、俺の事覚えててくれたんだ!
ねぇ、これから一緒に映画でも観ない?」
「観ない」
「えー・・・、じゃあ食事でもしない?
そこに美味いレストランあるんだけど・・・」
「イ・ヤ!」
「なんでアタシが、アンタみたいなダサダサな奴と食事しないといけないのよ!
アンタがあたしを誘うなんて、百万年早いのよ!!」
「ダサ・・・・、ヒドイなミスティーちゃん。
同じ森に住む仲間じゃないかぁ〜」
「やめてよ!
ただでさえアンタ達のせいで、森に住むあたし達まで誤解されてるってのに
仲間とか言わないでよ!!」
「ご、誤解ってなんだよ・・・
俺達は別にやましい事なんてしてないぞ・・・?」
「十分してるでしょうがっ!」
「ッチ・・・
しょうがないな・・・・そう言われちゃぁ・・・・」
「な、何よ・・・」
「いいからコッチ来いって・・・!」
「ちょっとヤダッ」
キキ〜〜〜〜−−−ッ
「ミスティーちゃん!」
「待ってよ、ミスティーちゃん!」
「イヤ!!」
「ミスティーちゃん、今の危ないよっ!」
「アンタのせいでしょ!!」
「あいつ、この間プレジャを誘拐した奴らの仲間・・・・」
「コッチ来ないでってば!」
「ミスティー〜〜」
「呼び捨てにしないで!!」
「こりゃ、どーゆうこった!!」
「あー、こりゃ最終部の終わりに来ちまったみたいだな・・・」
「どーゆうこった、そりゃあ!」
「今日はもう演らないって事だよ」
「な、なにぃ〜」
その頃、
ミスティーが夜の9時を過ぎても帰ってこないので、
心配になったネルはセル博士のおばぁちゃんの家を訪ねる。
「あら、ネル・・・・」
「母さん!
おばぁちゃん家に来てたの!?」
「えぇ・・・・
もしかして、探しに来てくれたの?」
「あ、違うの・・・!」
「(なんだ、違うの・・・・)」
「ミスティーがまだ帰ってこないの!」
「えぇっ!!」
「何かあったのかもしれないわ、警察に連絡しましょう!」
「うん・・・」
一方、町では・・・・
「なぁ、ちょっとそこの公園でおしゃべりするくらいでもいいからさ・・・!」
「ちょ、離してってば・・・!アタシ、もう帰らなきゃ・・・」
「いいじゃん、ちょっとだけだって」
「イヤァ〜」
「じゃあここでいいよ、
楽しい事しようぜ〜〜〜」
「やめてよ・・・もうやだ・・・アンタ最悪・・・・」
「きゃぁ!」
「な、何すんだ・・・・・って、あっ、お前はこの間の・・・!!」
「その娘、嫌がってんじゃん!」
「なんだよ、お前には関係ないだろぉ〜?」
「え、誰・・・?」
「も、もしかしてアタシを助けてくれるの・・・?」
「コイツは俺の女なんだよ!
コイツをどう扱おうと俺の勝手だろ!!」
「な、何言ってるのぉ?誰がアンタの女よ!」
「違うみてーだぞ?」
「違わないもんね〜〜
ほ〜ら、あっち行けよ!お邪魔虫〜〜」
「こんなアホな奴、彼氏じゃないわ!!」
「お前ら、また女の子誘拐しようとしてんじゃないだろうな?」
「誘拐じゃねぇ!家が近所だから俺が送ってあげようとしてたんだよ〜♪
ここらはお前のようなチカンが多いからさぁ〜」
「チカンはアンタでしょ!
あたし、家に送ってもらうならこの人がいいなぁ〜♪」
「え・・・?」
「え・・・・!?」
「ねっ!家まで送ってくれるでしょ?」
「え・・・・、いや〜まぁ・・・・・」
「ミスティー、俺が送ってやるってば〜」
「イヤ!」
「あたし、この人に送ってもらうんだもん♪」
「・・・・・」
「ミスティー、マジかよ・・・・
マジでそんな見ず知らずの奴についていくワケ?」
「うん♪」
「うんって・・・・」
「コラッ!あなた達、門限過ぎてるわよ!!」
「わ、ヤバ・・・!警察が来ちゃった・・・!」
「チッ、くそ・・・・
もうちょっとだったのに、お前のせいだぞ!!」
「何がもうちょっとだよ・・・。
全然だったろうがっ!」
「あーくそ・・・
後姿もカワイイなぁ〜・・・、なぁ、お前もそう思うだろ?」
「ソ、ソウダネ・・・・」
「そこの二人、早く来なさい!」
「お前のせいだぞ!お前が余計な事しなきゃなぁ〜・・・今頃・・・」
「あーはいはい」
「キィ〜〜」
「(あ・・・リュウさん達、置いてきちゃった・・・・)」
その頃、警察から連絡があり、
トニアはミスティーを心配して家で待っていた。
「はぁはぁ・・・、遅くなっちゃった・・・」
「お姉ちゃん怒ってるかな?」
「ミスティー!!」
「あ、あれ・・・?お母さん!!」
「ミスティー、こんな時間まで何してたの!
あまり心配させるんじゃありません!!」
「わっ、お、お母さんごめ・・・・」
「・・・ってか、
勝手に家を出てった人に言われたくないんだけど・・・」
「あたしがどこで何しようと、もう関係ないでしょ」
「ミスティー、ごめんなさい!
お母さんが悪かったわ!!」
「な、何よ、いきなり・・・・」
「話はネルから聞いたわ!
ごめんね。あなた達の気持ち、考えてなかったわ!」
「お母さん・・・」
「じゃあお母さん、家に帰ってきてくれるの?」
「えぇ、心配かけたわね」
「お母さぁ〜ん・・・・くすん」
「ごめんなさいね、ミスティー・・・!」
「ネルも・・・」
「良かった、母さん。
帰ってきてくれて・・・・」
ミスティーの夜遊びで、一日も経たず家出から帰ってきた母トニア・・・。
「あんた、またこんな時間まで遊んで!!
この間怒ったばかりじゃないの!!」
「今日はちゃんと理由があるんだよ」
「どんなよ!言ってみなさいよ!!
しょうもない理由だったら当分謹慎だからね!!」
「お、女の子助けてたんだよ・・・・」
「女の子ぉ〜?アンタとうとう彼女出来たの!?」
「ちげーよ!!」
「何よ、なんで彼女できないのよ!!」
「しらねーよ!!」
「あぁ〜、コーヒーがオイシイわ。」
翌日、
母トニアが家を出て行った事や、
ミスティーが夜遊びして警察のお世話になった事など、知る由もないセル博士は
朝まで仕事し、今帰ってきたばかりであった・・・。
「ただいま〜」
「おかえりなさい」
「トニアがこんな朝早くに起きてるなんて珍しいな・・・・」
「あなたを待ってたのよ・・・
そこに座って!」
「・・・・な、なんだろ。怖いな・・・・
家を出ていくとかじゃないだろうな・・・・」
「もう出たわ!」
「えっ!?」
「でも帰ってきたの。あの娘達のためにね!
それに・・・・」
「それに?」
「あなたの事、愛してるから♪」
「わーい♪」
「わーいって・・・・・・なにこれ」
こうして、セル博士のしらぬ間にチリかけた家族は
一定の解決を見せたのだった・・・。