13 バンパイアの女編


前回の続き、仕事を終えて家へと帰る途中
ジャンクが足を止めた場所には・・・・



この間、墓地でジャンクに警告をしたバンパイアの女性
デル・ア・ブラッキィがいた


ウラジミール
  「デル・・・
   いい加減わがままを言うのはやめないかっ」

デル様「わがままじゃありませんわっ!
    ワタクシの意思は以前と全く変わりません!」


ウラジミール
  「私はデル家が潰れそうなのを、
   黙ってみているわけにはいかないのだ!」

デル様「黙ってみていて下さればよろしいでしょ?
    アナタには関係のない事です」


ウラジミール
  「デルよ、そんなに私の側室になるのが嫌なのであれば
   正室にしてやってもよいのだぞ!」

「お前が私のモノになるのならば、
 これ以上の喜びはないのだからなぁ!」



デル様「オホホホホ、ご冗談はやめてくださいな。
    ワタクシはどちらにもなるつもりはありませんわ」

デル様「ワタクシの心はワタクシのものです。
    ワタクシを卑下するような無礼なお方は
    こちらからお振りして差し上げますわ!」


ウラジミール
  「そんな事を言っていられるのは今のうちだけだぞ!」

「お前の前の屋敷は、
我がシュリック家が手に入れさせてもらった!
お前の帰る場所はもぅどこにもないのだ!!」


「このまま私を拒むのであれば、
お前を慕っているあの従者もどうなるかわからんぞ!」

デル様「ポ、ポルトーは関係ありません!
    やめてください!」




ジャンク「・・・・・・なんか、様子がおかしいな」



デル様「これ以上、ポルトーの事を言いましたら
    ワタクシ怒りますわよ!?」

ウラジミール
  「フッ、お前に何ができると言うのだ
  お前の従者など、あの若いバンパイアだけではないか!」



「それに、我ら『サタンクロス』を敵に回したら
この街では生きていられなくなるのは
貴様もわかっているはずだ!」

デル様「イタッ、はっ、放してください!」


ジャンク「チッ、バンパイアが・・・・
     こんな所で目障りな事しやがって!」



ウラジミール「ムッ、なんだ貴様はっ!
       私の邪魔をするな!」

ジャンク「俺の邪魔してんのはお前等だ!
     バンパイア共めっ!」


ジャンク「貴様らが、
     図書館の入り口前で群れているおかげで
     一般市民が通れないのがわからないのか!」

デル様「ジャ、ジャンク様・・・・?
    なぜ・・・このような所に・・・・」


ジャンク「ほら、バンパイアはお断りって書いてあんだろ!
     わかったら去れ!この悪魔がっ」

ウラジミール
  「何を言っている!
   そんな事、一言も書いてないだろ!!」


ジャンク「俺がいる時はそうゆう事になってんだよ!
     それとも何か?クサレバンパイアが
     俺に意見するつもりか?」

ウラジミール
  「な、なんて失礼な人間なんだ君は!
   君の方こそ、私が誰だかわかっていないようだね?」


ジャンク「フン、バンパイアが高い地位にでもいるつもりか?
     そんな格好で言われても説得力ないな。
     タキシードでも着てから、出直してこい!!」

ウラジミール「タ、タキシード!?
       君は私をおちょくっておるのかね!」



デル様「えっと、お二人が争っているのは
    ワタクシのせいでしょうか・・・?」

デル様「ど、どうしましょ・・・」オロオロ


ウラジミール「うぬぬぬ、この人間め、許せぬ!」

「よりにもよって、この私を愚弄するとは・・・!!」


ジャンク「ほら、今のうちに逃げるぞ!」

デル様「え、ジャンク様?ま、待って・・・・!」


一人駆けて行くジャンクに、慌てて付いていくデル様



デル様「ちょ、ちょっとジャンク様
    待ってくださいまし・・・!」


わけもわからず、必死に付いていくデル様



デル様「お、おかしいですわね
    なぜ、ジャンク様に追いつけないのかしら・・・」


何故かバンパイアの走りでも追いつけないジャンクの足



デル様「またんかい、ゴラァ!」ゴオォォォォ


デル様「はぁはぁ、お、おかしいですわ
    距離がちょっとしか縮まりませんわ・・・」

デル様「ジャンクさまぁ〜〜〜〜!
    待ってくださいぃ〜〜〜〜〜!!」


デル様はジャンクに追いつこうと必死に走る

普段走るなんて事はしないデル様だが、
この時は、バンパイアの本領を発揮して走った



ジャンク「ここまで来れば大丈夫だろう」



結局、ジャンクを抜く事もできず、
公園に辿り着いた二人




ジャンク「・・・・・・・・」

デル様「・・・・・・・・」




デル様「フ、フフ・・・・」


ジャンク「お前、何笑って・・・・・」

デル様の笑いにジャンクもつられ・・・



デル様「フフ、フフフフフ・・・・」

ジャンク「ちょっと、お前・・・・・はは」


デル様「アハ、アハハハハハ!」

ジャンク「ははは・・・・お前やめろって・・・あはははは!」


デル様「ウフフ、い、いやですわ
    ワタクシったらはしたないですわ・・・フフ」

ジャンク「あははは・・はは・・・・はぁはぁ・・・・」


ジャンク「あのなぁ、お前・・・
     もぅそんな丁寧な喋り方したって無駄だぞ」

デル様「フフ、そうですわね・・・・・
    でも、スッキリしましたわ」



デル様「ジャンク様、先程は助かりました」

デル様「このご恩は、いつか必ず致しますわ」


ジャンク「フン、バンパイアなんかと
     貸し借りなんてしたくはないが、
     まぁ、返してくれんなら今の所は貸しといてやる」

デル様「えぇ、ワタクシもそうして下さった方が嬉しいですわ」




ジャンク「・・・・・じゃ、俺は帰るからな」

デル様「はい、ジャンク様、本当にありがとうございました!
    お気をつけて・・・・」


ジャンク「あぁ・・・・お前も・・・」
デル様「はい」


こうして、何事もなく別れた二人だったが・・・




ジャンク(俺、なんでバンパイアの女なんか助けてんだろ・・・)


ジャンクの心に芽生えつつある感情は
まだ本人の知るところではない・・・

しかし、デル様の方は
遠い遥か昔に忘れてきた感情を取戻しつつあった


デル様「・・・・・何かおかしいですわ」

デル様「胸が・・・・何故かソワソワしますわ」


デル様「これは・・・・、おかしいですわね・・・」


この時の二人には、自分達の心の行き着く先など
知る由もなかった