第二話「彷徨える青年」


「よぅ、アッサム。久しぶりだな〜」


「久しぶりって、この間会ったじゃん」

「おーぅ、冷たいこと言ってくれるね〜。
俺はこんなにこんなに会いたかったのに〜」


「ウソっぽぃっての」




「よーぃしょっと〜〜。」

「あれ、どったの?座れよ」



「はぁ・・・」


「・・・・」

「・・・アッサム、お前がこーゆうトコで独りでいる時は
大概が家に居たくない時だよな」



「・・・あぁ、よくわかったね」


「そりゃま、俺は君の彼氏なわけだし?」

「ていうのは冗談でだな・・・」


「わかってるよ」



「で、何悩んでんだよ」




「あぁ・・・」

「あ、わかった!俺が先に高校卒業しちゃって寂しいんだろ!」


「あ〜そうそう・・・」


「おぃ、投げ出すなよ!ちゃんと聞いてやるってば!」






「・・・俺、女好きになれないかもしんない」

「・・・・・」




「・・・え!?うっそマジ?」

「ま、ままま、まさか俺ぇ〜〜〜?」



「え、なにが?」

「だから俺でしょ?俺に恋しちゃったんでしょ?」



「ちっげーよ、バカ!」

「あ、違うの?」



「俺はノーマル!ノーマルなの!」

「やぁね〜冗談よ、ムキになっちゃヤ〜」


「(怒)」





「・・・あーでもわかるかも。
お前んトコはねーちゃんが三人もいるし・・・
それにほら、お前よく女の格好させられたり、ねーちゃんが割った花瓶をお前に擦りつけられたり、部屋の片づけとかもやらされてただろ?
そんで逆らうと、ノート破かれたりトイレの電気消されたり・・・・・
マジかわいそーだったな、アレはw」


「やめろよ、思い出すだろー!」

「そんで年頃になると、体触られ・・・」


「もーいいって・・・!」


「お、おぉスマン」



「んでもマジであんなに下僕扱いされて育ったら
女を好きになれないのもわかるわ・・・」



「そういやお前、好きなタイプとかってどんなよ?」


「え?」


「だから、お前が好きになるような女性だよ。
理想のタイプくらいいるだろ?おとなしめ〜とか・・・」




「え・・・、ん〜〜と・・・」


「・・・」


「・・・・」


「・・・・・」

「・・・おい、いないのかよ」




「・・・ま、でもな
マジでお前羨ましいって思ったコトあんだぜ」


「あ?羨ましい?(怒)」

「そんな怒んなってー!
俺は妹が一人だけだからさ、上にあんなお色気たっぷりなねーちゃん達いたら囲まれてみたいって思うっての!
あぁ・・・俺が何度お前んちにもぐり込もうとしたことか・・・(遠い目)」



「・・・おぃ」



「ま、焦ることねーよ
誰だって人生最大のモテ期ってのが来るんだ。
そのうちアッチからもコッチからも言い寄ってくる女がくるさ」

「俺、別にモテたくねーけど」


「あ、それモテる奴のセリフだぜ?おーヤダヤダ、これだからおモテになるお方は・・・」


「モテたことねーけど・・・」


「だからそのうち来るって」


「わかったよ」




「あ、でも勘違いすんなよな!待ってたって何も起きねーから!
どんな時も自分から動かなきゃ何も始まらねーんだぜ!」


「・・・・・」

「ホントにわかってる?
ねーちゃん達にしごかれてて見逃すんじゃねーかな〜」


「うっせーよ」


「お、なんでそこでちっちゃい「つ」入れるかな?」


「あーマジうっせー」





「まぁそんな気にすることねーよ、70歳でも童貞って奴いるし」

「・・・・・」



「おいおいそんな心配そーな顔するなよ、
万が一運命の人が現れなかったら、俺が〜〜抱いて〜〜やるから〜〜〜♪」

「マジ勘弁して」






「もー俺帰る」


「あ、そう?」

「じゃあまたな」




「なんかあったら電話しろよー」


「しねぇよ」


「あ、冷たくね〜?」

「嘘だよ、なんかあったらな」


「おぅおぅ」




「よしよし、おにーさんが元気を分けてあげよう」


「うわっ!だからこーゆーとこではやめろっての!」

「おぉ、人がいないトコならいいのかな〜?」


「キモチワルイ」




「もーマジ勘弁しろって・・・」

「またリル姉になんか言われるっての・・・ブツブツ





しかし、彼の曇っていた心はいつの間にか晴れていた



彼は男が好きなんじゃない、ただ女を愛せないだけなのだ



姉三人の猛攻を一身に受け育ったために、女性恐怖症に陥っていた

しかしそんなしがらみからも抜け出せる日がいつかくる事だろう・・・











おまけ


「ふんぐぅ〜〜〜〜〜!」

「うわっ、なんだよ何もしてねーよ!(たぶん)」