第21話「吐き気のする男」






「おい、どこ行くんだよ」

「え?」



「フィニーに餌あげに行くだけだよ・・・?」

「ふ〜ん・・・、俺も行く」




「え〜〜?ちょっと外に餌あげに行くだけなのに・・・・


じゃあさ、春祭り一緒に行こうよ!」

「・・・うん。」




「じゃあ行こ行こ〜〜♪」バタン

「・・・・・・・・・」





「・・・・・・・」

「・・・・ギルバートめ・・・、俺に何も言わない気か・・・?


カセリンは一応、俺の娘だぞ・・・・!」










春祭り会場









「あ、たまご発見!」

「たまご?」




「春はね〜、イースターって言って
たまごを探したりするお祭りなんだよ〜〜♪」

「ふ〜〜ん・・・・」



「へっへー♪
いっぱい集めるんだ〜〜〜♪」




「どこが楽しいんだ・・・・?」

「フン、ギルバートはそっちで遊んでれば!?
あ、あっちにも〜〜♪」




「・・・・・・・」



「・・・・なんか怒られたっぽいし」

「終わるまで遊んでよぅ〜〜・・・・」





「この馬のひづめをあそこに引っ掛けるんだな?」

「こんなんチョロイだろ・・・」






「あ、やべ・・・・意外にムズイかも・・・」

「あ、こっちにもあった♪」





「・・・っていうか、さむっ!!」

「春といってもまだ寒いな・・・
し、白い息が出る・・・・」











ガチャ・・・・





「あ〜終わった終わったぁ〜〜、
ったくダリィぜ・・・・」





「あんなシケた金じゃ、酒も買えねぇ〜〜〜
あいつ売った金もあっつう間に無くなっちまったしなぁ・・・・」

「どこかに大金落ちてねぇかな〜〜


・・・・・・ん?」







「お、あれギルバートじゃねぇか?
やっぱりこの間の見間違いじゃなかったようだな・・・・」

「遊ぶ余裕があるとはいいご身分だぜ・・・・」






「おい、ギルバート・・・・!」

「・・・・・だよな・・・?」










その声を聞いた瞬間、
ギルバートは凍りついた・・・・・









どこかで聞き覚えがある声・・・・・








聞き間違えるはずもない、できれば一生会いたくないとさえ
思っていた・・・・











「おい、無視か?」





ギルバートの父親、ロドリゲスだ・・・・。












「ねぇ〜寒くなってきたし、そろそろ帰ろう〜〜!」




「おいギルバート、聞こえてんだろ?」




「・・・・?誰だろう・・・・」

「ギルバートの知り合い・・・・?
でも、なんか・・・・・」





「ん?」

ビクッ




「ほぉ、お嬢ちゃんも一緒だったか・・・」






「クックック・・・・、
ギルバート、いい女じゃねぇか・・・お前の女か?」


「・・・・・・・・・違う。」





「カセリン、先に帰っててくれ・・・・。」

「え・・・・、う、うん、わかった・・・。」







カセリンはギルバートのいつもと違う声のトーンに
何かを感じたのか、言う通りにした。







「おいおい、いいのかよ帰らせちまって・・・・・
あんないい女一人で帰らせたら、悪い奴に襲われちまうぜ?」

「・・・・アンタより悪い奴がいんのか?」




「言ってくれんじゃねぇか・・・・」










「たくよぉ、水くせぇじゃねぇか・・・・
この町にいるんなら、挨拶ぐらいしに来いよなぁ」

「なんでだよ・・・・・」




「あぁ?ここまで育ててやっただろーが」





「・・・・・・・・」

「なんだ?いっちょまえに自分一人で育ったとか
思ってんじゃねぇだろうな?」





「・・・・・お、思ってねぇよ・・・。」

「ッチ、かわいくねぇ野郎だぜ」








「・・・・ところで、お前よぉ・・・・」

「今どこに住んでるんだ?」




「・・・・ど、どこだっていいだろ・・・」

「よくねぇよ!
お前まさか隠す気じゃねぇだろうな!?」



「自分だけ解放されたとか思ってんのかよ」

「・・・・やめろよ!あ、アンタとはもう・・・・・・
もう関係ねぇから!!」





「ほぉ〜〜、新しい家で新しい家族って奴と
上手くやってんのか?」

「・・・・そうだよ・・・・。」







(・・・もう、勘弁してくれ・・・。
喋りたくない、この人とは・・・・






吐き気がする・・・・








もう・・・、帰りたい・・・・・!




おっさん達のいる家に帰りたい・・・・!!)













「クックック・・・、上手く騙くらかしてるワケだ・・・・」

「じゃあよぉ、お前その家から一番高くて高価そうな物
持ってこいよ。」




「・・・・アンタの言う事は聞かない・・・!」

「それで今までの事はチャラにしてやるって言ってんだよ」




「はっ、それで今まで育ててやった恩返せって事か?
アンタには、これっぽっちも恩なんか感じてねぇよ。」

「むしろ、売ってくれて感謝してるくらいだ・・・・!」









「クックック、いい面構えじゃねぇか!
いいぜぇ、やっぱ俺の息子だぜ!!」

「だがよぉ、お前は俺の言う通りにするしかねぇんだよ・・・・」








「だって、お前にはもう・・・・」






大事なモンができちまっただろ?








「さっきの女とか、失いたくないよなぁ?」

「・・・・・・・・・」